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  「平成26年新春講演会」講演録 (平成26年1月23日)
今という時代と経営者の使命
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       講師 経営共創基盤(IGPI)代表取締役CEO 冨山 和彦 氏

このフォーム印刷産業というのも、コンピューターリゼーションと一緒に出てきた産業ですよね。連続伝票をコンピューターで処理して打ち出すということから始まったことによって発達した産業でありますが、その産業の裏側では消えていった産業があるわけです。コンピューターが出てきたおかげで、かなり多くの珠算学校が間違いなく潰れたはずです。私ぐらいの世代まではそろばんを習いました。今の若い子でそろばんができる子はほとんどもいません。結構 珠算学校はどこの駅前にもありましたよね。ですから、これは明らかにそういう交代が起きるわけで、実は「イノベーションとか改革」というのは、必ず日向と日影をつくってまいります。  
その時代に合わせて、私たちは常に何らかの取捨選択、新陳代謝を会社の中で続けなければいけないわけです。この新陳代謝が難しいのは、どこにいるべきかという先見性の問題もあります。恐らく「来るであろう未来」がそのとおりになった時、にいろいろ都合が悪いことが起きるとすると、人間は「そういう未来」が来て欲しくないと考えます。だから、「そうならないほうを予測する」いや予測したくなるのです。要するに、人間は「見たい方の現実を見てしまう」のです。ですから繊維業界も「何だかんだいってまた繊維の調子がよくなる未来を一生懸命考えていた」。そういうものです。  
ストーリーはいくらでも描けるので、後から考えたら「こんなことは起きるわけがないだろうというストーリー」を人間は考え出します。「そうはいうけれども」というのを人間は考えてしまいます。実際、繊維会社の例ではいろいろな形でもう一回、繊維がよみがえるストーリーを考えています。例えば画期的な高機能素材が発明できて「めちゃめちゃ大きくなるというストーリー」を描いています。それは起きましたが、炭素繊維として登場したのは10年後です。業界5番手、6番手になっている企業から起きる可能性は低いです。トップ企業で、技術開発投資をしている規模も桁違いに多い。だから ストーリーは描けるわけです。
最近のケースでいうと航空産業の事案です。前半戦は私どもがやった再生事案ですが、この問題というのはこれまたシンプルであり、難しくない話です。この企業がおかしくなった要因は「オーバーキャパシティ」です。キャパが大きすぎたのです。航空産業というのはビジネスとしては単純なビジネスで、稼働率商売です。皆さんの生産設備だったら機械がどう稼働するかというのは非常に影響が大きいですよね。航空産業はフォーム印刷産業以上に固定費の固まりなのです。固定費として飛行機を買ってしまっており、路線も定期航路なので乗客がいないからといって飛ばさないわけにはいかない。お客さんが少なくても飛ばさなくてはいけないのです。その点 私も何度か経験しておりますが、アメリカでは平気で急に機体故障を理由にして飛ばなかったりしますが、さすがに日本の会社がそれをやってしまうわけにはいかない。1人しかお客さんがいなくても飛ばします。これも固定費です。  
ですから、基本的に固定費をどう稼働させるか、となるわけです。当時 この航空会社は日本の半分のシェアを持っていますから、多少営業努力をしたからといってそんなに変わらないのです。これ以上増えてしまうと独禁法にひっかかるぐらいのシェアを持っていました。ですから、全体の航空需要によってマックスの売り上げがほぼ決まってしまいます。 航空需要がわりと順調だった場合においても、キャパシティが3割方多かったのです。その3割を減らすしかない単純な算数です。まずこれをやらないことには、誰が来ても再生しません。まずこれが前提条件です。この企業の経営幹部というのはインテリばかりです。東大卒やMBA持ちの優秀な方々です。しかし 社員の大半は8つの組合に所属し、過去に多くの労働紛争がいっぱいあって大変な歴史を背負っています。人員問題に手を付ければ不当労働行為で訴えられてしまう可能性もあり手を付けられないのです。 
一方 路線を3分の1に落とすことも大変です。たくさんの規制があって、過去のいろいろな経緯の中で決められた路線です。  
それから、飛行機を減らす。皆さんの場合もあるでしょうが、できるだけ償却費を減らそうと思って、耐用期間を長く設定しています。だから、簿価が高いです。これらは担保に入っています。ですから、銀行からするとかなり高い簿価の担保がどこかしらに残っているのです。そして飛行機を売却したくても機体が古く、かつ燃費が悪い飛行機は売れないのです。整備の人が自慢して「機齢35年を超えた経年機を整備したら世界一です」といっていましたが、あまり自慢にならない世界です。  
今日は比較的年配の方もいらっしゃるので「アテンションプリーズ」というドラマがあったのを覚えていますか。紀比呂子さんが主役をやっていて、私は割と好きだったので覚えているのですが、1971年か72年ですが、あの最終回にジャンボ機が初めて就航するシーンがあります。それがまだ飛んでいたということです。  
これはやはり日本型の組織ですから、そういうことをやると「あそこも大変」「あなたも大変」「私も大変」となり、要は、利害が一致してしまうのです。だから、抜本的には正しいが「うちだけは止めようぜ」とか言って、暗黙のうちにそれを封印するのです。タブーになってしまいます。  
みんな頭がいい人たちが多い組織ですので、「3分の1削減の抜本策を打たないで何とか回る」というシナリオを一生懸命書くことだけみんな上手になります。それは頭のいい人が集まって書こうと思えば、いろいろ書けるのです。 「東京オリンピックでこれから観光立国が大成功して、もの凄くお客さんがいっぱい来てくれて、ガーッと需要が増える」とかというストーリーは非常に高い能力を持った人がいっぱい集まっていますから直ぐに書けるのです。しかし 彼らの能力は本質的な経営の問題ではなくて、ほとんどそれに使われてしまいます。  
当時おもしろいことが起きました。我々がこの企業に入ってから1週間後、企画とか企業の中枢の管理部門にいた40代の数人の社員と、あるホテルの一室を予約してそこで彼らに会いました。彼らは「A4」の紙を持ってきました。こういうパワーポイントです。表に「ぴかぴか○○再生プラン」と書いてあるのです。「こうすれば再生しますと」パッとめくっていったら、3分の1を落とせば○○は凄くいい会社になると書いてあるのです。わかっているのです。大企業で一番情報を持っているのは中堅なので、彼らは全部数字をさわっている社員ですから。  
タスクフォースが1カ月で終わり、何であんなに早く計画策定を終わったかというと、実はそれがあったからです。
私たちの物事を見る目、物事の判断というのは、どこかでそういうバイアスが、まだ気が付いていればいいですが、下手をすると無意識のうちに入ってまいります。「未来を見る目」というのは曇ります。ですから曇りを晴らして「目の前にある現実」「これから起きる現実」を直截に見ることができるかというのは、我々の信念が問われるような非常に重い問いなのです。そこを乗り越えていかないと、繰り返し申し上げているように「意思決定を誤る」ことになります。会社を救えないのです。 
恐らくこれは大企業であれ、中堅、中小であれ、みな問われている問いだと感じております。  
もっといってしまうと、比較的フォーム業界は中堅企業が多いので申し上げておくと、中堅企業が一番やってはいけないのは、「会社を近代化しなければいけないので、物事は合理的に、近代的に、組織的にしなければいけない」という戯れ言を信じてはいけません。あれは間違いです。意思決定というのは、人の数が増えれば増えるほど大体遅くなって低劣になってきます。「三人寄れば文殊の知恵」といいます。たくさん集まればいいのであれば、多分100人にしたはずなのです。なぜ3人なのか。多分、意思決定のレベルが上がるのは3人ぐらいまでなのです。それ以上多くなると「船頭多くして船山に登る」です。  
裏返していうと、中堅企業が大企業に対して持っているアドバンデージは「意思決定者の数が少ない」ということです。オーナー会社であれば、オーナーが決められるということです。このアドバンテージは絶対に捨ててはダメです。よくある経営本、特にMBA系の本はほとんど嘘が書いてあるので信じないでください。(笑)
では、そうやって新陳代謝をやっていきましょう、ということが今の経営上のテーマになるのですが、「新陳代謝をどこに向かってやればいいのか」という話をしたいと思います。  
日本の産業というのは大きくなると世界に負けてしまうということで、半導体とか、DVD、リチウムとか、これはよく出てくるスライドです。  
この原因は、実は二つあります。一つは、先ほどの繊維の糸と同じで、コモディティになって、「量とコスト」の勝負になるのです。大きな市場、世界的なメガマーケットを形成すると、パワーゲームに移っていきます。パワーゲームに移っていくと、大きくならないと対抗できません。競争にならないです。日本というのは、ご存じのように、いっぱいプレーヤーがいて、みんな止めずに頑張ってしまいます。頑張ってしまった結果として、サムスンに個別適応されます、LGディスプレーに個別適応されます、あるいはホンハイに個別適応されるわけです。これが一つです。
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