日本フォーム工連・技術委員会セミナー記録

 技術セミナー[T]
「フォーム印刷業界におけるCTP化への取組み」

講師 平林利文氏・嶋野正紀氏
第1部
株式会社メディアテクノロジージャパン
 
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関西・中国・四国地区CTP導入マップ 2005年
  ちなみに、関東地域、東日本の場合こういう表をつくっていないので、関西、中国、四国の最新情報になります。これはあくまでCTP全体ですが、2003年3月で317 台。各都道府県では、都市部中心、大阪中心に多い。最新の情報がこの「2005年3月末現在」のものです。これでいくと556台ですので、関西地区で200 数十台増えているのもおわかりいただけます。つまり、CTPそのものは、どんどん数は増えていく。それが先ほどのCTP化率の増加につながっています。

 ここまでがちょっと統計的な数字で、フォーム、あるいはビジネスフォーム業界が、印刷業界全体でどれくらいの規模でどんな予測がされているのか、そしてそこに入っているCTPが何台くらいあって、さらに商印も含めてのCTPの台数がどれくらいか、非常に駆け足で全体をご説明させていただきました。
  きょうの本題であるこういったデジタルワークフローを構築してCTPというデバイスを導入いただいていろいろ使うとき、なぜCTPなのか、べつにフィルムセッターでいいではないか、ということも当然議論としてあるわけです。
 これをちょっとご説明したいと思います。
 
DTP化による工程の変化(なぜCTP?)
  これは、CTPをご説明するときに、こういうことでCTPのご提案をしているという資料です。ここはイントロの部分とお考えください。
  印刷までの工程はいろいろあり、90年代以前のものと90年代前半のDTP、そしてDTP+製版+刷版、90年代から2000年、そして2000年以降という形で、それぞれの工程の時間がどんどん短縮してきた。あるいはある部分、CTF、いわゆるフィルムで出しているものが版に変われば、ある工程がスポンと抜けたりしますので、製版の工程がぐっと圧縮される。そういうようなことで、デジタルとネットワークによる中抜きという書き方をさせていただいてい
 
ますが、工程の長かったものが、だんだん圧縮してきているということです。
  デジタル化ということでフォーム印刷業界はどちらかというと、専用機から入って、それをDTP、キーワードとしてはPS(ポストスクリプト)というようなものにそれを転換していって、それがどこまでお進みになっているかというようなことではないかと思います。

 
  商業印刷中心の印刷会社で話されるCTP効果
  では、なぜCTPかというときに、これも私ども、商印の分野にCTPを販売させていただいて、フォーム印刷の業界様にもいろいろなCTPを導入させていただいておりますが、CTPを導入された印刷会社で話されるCTPの効果、CTP化によってよかったところ、悪かったところをまとめてみました。
  ポイントとしてよく出てくるのは、「印刷機の稼動率の向上」。それと「均一に露光された刷版」。つまり品質の均一な刷版が安定して出てくる。そして「品質の向上」。こういうことがよくいわれることです。ただ、これは一般論です。
 
 
 
商業印刷中心の印刷会社で話される課題
  しかし、効果と課題は背中合わせですので、そのような効果とともに課題も実際に出てくるわけです。
  商印の分野での課題は、こうしたことです。
  上のグループでは、たとえば「オールデジタルでの入稿」。先ほど冒頭のご挨拶のなかにも、デジタル化が進んでデジタル入稿が増えてきている、それもたぶんPSで入るわけではなく、PDFの話もあるでしょうし、また違ったフォーマットで入ることもおありでしょうし、テキストベースで入るとか、状況によって違うと思いますが、そういうデジタルでの入稿。それと校正をどうするの
 
 
  かということで、「DDCPやインキジェットプリンタでの校正」。
  そしてCTP処理というとき、お客さまに「CTP化した」ということで転嫁できるのか。「CTP化」という料金については当初よく議論になったのですが、「おまえのところ中抜きでやっているだけではないか。フィルムをなくしてなぜ値段を上げるのか。もっと安くしろ」というような話が実際お客さまのところから出てまいりました。これが上のグループです。
  真ん中のグループの話は、たとえば「印刷機の精度」では印刷機の歪み、ピンの狂いなどが課題になってくる。
  それから「パンチャーの精度」「印刷機の見当調整原点リセットによる一発見当への影響」。このへんもよく出てきます。これは、俗にCTP化することによって、一発見当で見当合わせが早くなり、それによって印刷機の効率が高まるというのが商印の世界で出てくることですが、CTPを入れたからといって、それでいい印刷物ができるか、あるいは印刷機の効率が上がるかというと、そういうことはない。結構このような細かいところで足を引っ張るというので課題としてあげさせていただきました。
  デジタル自体の処理としては、下のグループの部分です。「データ保管の種類と方法」「カラーマネジメント」ということが課題となるかと思います。
 
 
 
関西地区(2社)中部地区(3社)に聞いてみました
  先ほど、30台近い機械を私どものほうから、フォームを専業あるいは兼業でおやりになられている会社、20数社に入れさせていただきましたという話をしました。そのうち中部地区と関西地区でインタビューをしてきました。20数社のうちの5社で、CTPを入れたことによってどうであったか、現場の生の声です。
  関西地区は、A社「スキルレス化で、出力版の安定供給によって印刷機の不安定さが顕在化した」というコメントをいただいています。
  これは、CTPということで、いままでのアナログの焼きに比べて、スキルレス化を図れて非常に安定した品質のものが出るようになった。刷版が非常
 
に安定しているので、逆に印刷機の不安定さが顕在化した、ということです。
  B社「品質面は、工程の短縮によって変動やミスの要素が激減した」。工程数が増えれば増えるほどミス、ゴミやほこりの問題を筆頭にいろいろなミスが起こる可能性があるのですが、こういう変動要素、ミスの要素が激減したということです。
  「生産性は、工程短縮によってミスの要素が激減した。したがってCTPを使うことによって工程時間が読めるようになってきた」ということを指摘されていました。
  中部地区の3社A〜C社にも、実際にお邪魔して経営者の方あるいは現場の方にお話をお聞きしました。
  中部地区A社は、平面タイプを入れて半年たたないところです。「品質面には満足、これから実稼動」ということで、まだまだフィルム在版が多かったということで、これからというところでした。
  B社は「フロントデジタル化を優先、シルバーデジプレート→サーマルに移行、フロントのデジタル化を完了していればどのようなことにも対応できる」、C社「フロントデジタル化が完了していたためCTF→CTP移行も順調」というように、B社、C社は、かなり前から製版のほうのデジタル化をやられていたので、「CTF、CTPという形で出力の形態が変わってきたことに対しては何の抵抗もなかった。やはりフロント側のほうをきっちりデジタル化しておく。そういうワークフローを構築しておくことが重要だ」と指摘されていました。
 
 
 
商業印刷とフォーム印刷
  でも、商業印刷とフォーム印刷では課題が違います。つまり商業印刷で起こっていることがすべてフォーム印刷にイコールかというと、違うということです。
  きょうは、フォーム印刷の場合だったら、CTP化を考えるとき、このへんが課題になり、皆さんこうした工夫をされているというお話をいたします。
  印刷機というと商印の枚葉中心にしか考えていなかったため、フォーム印刷機を見せていただいたときはびっくりしました。そんな話題をこれからお話しさせていただきたいと思います。
 
 
  釈迦に説法で恐縮ですが、印刷機が違うというところが、商印とフォーム印刷を考えるときの原点だと思います。
  商業印刷でも印刷物のサイズが違うのは当たり前ですが、ある程度の規格のなかで動くことが多い。出版系であれば、A列、B列、それをどう面付けするかという世界での話です。フォームの場合は仕上がりサイズが多く全然違う。当然、刷版サイズが違うということです。
  そこで、今回、先ほど5社にインタビューしたときにも、本当に素朴な疑問として、「いろいろな版サイズをCTPではどのように処理するの?」「枚葉ではないけど一発見当は本当に出来るの?」「置き版(フィルム)が多いけどその対応は?」、この3点をどうされているのか聞いてきました。
  結構これは重要だと思います。私ども、CTPをいろいろご紹介させていただいているときにも、結構ここがポイントになります。これを先駆者たちはどういうふうにしているかご紹介したいと思います。
 
 
 
輪転と枚葉の違いは?
  左側は、印刷機の写真で、ホームページから拝借してきました。一番上は、太陽機械さんのフォーム輪転機です。真ん中は小森さんの商業印刷輪転機、下がリョービさんの枚葉械です。
  真ん中に版胴を書いたのですが、サイズがいろいろ違いますね。
嶋野 そうです。フォーム輪転のほうは版胴がいろいろサイズで変わります。俗にいう「何インチ」というところでやられています。
  大日本スクリーンにとりましては、これが結構センセーションでして、CTPを売りにいくときに、商業輪転や枚葉を見ていましたから、フォームのほうを
 
 
  見せていただいて、なぜこんなにいっぱいあるのかということがありました。同じ機械でも、サイズ別で版胴サイズが違います。これでいろいろ版サイズがあることがよくわかってきて、どういうふうに使われているのかということで、CTP化のときにいろいろ課題が出てきた。そういうことであえて書かせていただきました。
平林 何年か前、私も最初に嶋野さんといったとき、皆さまの前で恥ずかしいのですが、私など目が点になってしまいました。では、それをどう処理していくのかということは十分検討しなければいけないと思った部分です。
  絵で描かせていただいたのは、平面図としてフォーム印刷は横幅は一緒で、長さの違う版が必要ということ、枚葉のほう全部ではないですが、Uカットを採用している。
嶋野 枚葉はUカットがだいたい基準で、版胴にとめる際の基準がUカットになっています。その横の黒い丸と四角の穴は、刷版をつくるための、版をはり込む際のピンです。そのピンを利用して、輪転機のほうは曲げ加工されたりするような形です。
  ですから、CTPを我々が提供する際には、この基準となるピンがどういう形のピンを使っておられるかどうかをお調べする。版サイズも合わせましてこのへんの調査をさせていただくことになります。
平林 曲げの側面図は、横から見たときの版曲げはだいたいこんな感じですね。輪転という意味ではだいたいフォーム印刷機も同じで、ここ(曲がっている部分)に引っ掛かっているだけ、という形ですね。
嶋野 はい。フックでつかまるという形です。商業輪転では2段階、3段階と曲がっていますが、フォーム機のほうはそこまで曲がっていなく、直角に曲がったくらいのものもあり、曲げ加工は少し違います。
  枚葉のほうは、Uカットでぴったりピンに落とし込み、直接ピンを使って版胴にとめるというのが枚葉のやり方です。輪転のほうは、ピンを基準に曲げるというだけで、ピンそのもので穴にとめる方法ではありません。
平林 今、嶋野のご説明させていただいたところが、一発見当とか精度とかというところに影響してくるということです。
  異なる版サイズが必要になってくるということです。
  フォーム印刷機に必要な刷版サイズというのは、先ほどポンチ絵ではああいう形でいろいろなものを貼ってあるのですが、うちも一生懸命調べました。
嶋野 これがエクセルのデータです。お渡ししていない資料ですが、私がいろいろな会社を回って調べた版サイズを一覧にしたものの一部です。
  BF輪転の会社様を調べさせていただきましたら「BF輪転」と書きました。「校正会社」もあったりします。
  BFの調べたもので版サイズの幅が一番大きいので620mm くらいというのがこの時点ではわかってきた。だいたい450mm 〜500mmくらいの版幅が多かったわけです。
  商業輪転でいきますと、B3縦くらいの輪転機の幅のサイズです。大きく違うのは、縦方向です。版胴でサイズが全く変わってきますので、これは、8インチ、200mmくらいから最大600mm いくつまで版サイズがありました。最近調べましたら800mmくらいまでいく場合もありました。
 
 
 
BF用印刷機仕様(版サイズ例・曲げ加工)
嶋野 これは、うちの社内の営業向け資料みたいなものでして、版胴が変わるよということを営業的に勉強させるためにつくった資料です。左端がお客さまの版サイズです。インチサイズでだいたい決まってきます。幅がありまして、縦方向のインチに対する比例関係で「版サイズ」があります。一番右端が胴サイズになります。
  結局は、曲げが入りますから、曲げの分をのぞいたら実際の印刷エリアになります。
実際の使われている版サイズというのは、曲げ加工分をプラスしたサイズになります。
 
 
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