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  平成23年新春講演会(平成23年1月27日開催)
「取り戻そう! 日本人の忘れている心と知恵
 (2) 
       講師 後藤 三愚 氏
           社団法人心学修正舎理事
                     ←講演会トップ
それでは本題に移らせて頂きたいと思います。
今日のお話のテーマを「取り戻そう、日本人の心と知恵」と致しましたのは理由が御座います。一つは過去の講演会の内容には一本筋を通しておられるように感じ、同時にその中には私が考える 「日本人の 伝統的な心と知恵」が含まれていることも感じています。
もう一つは 12年前 「心学開講270年記念シンポジウム」を京都国際会議場で開催した時に、主催者
の一員であった私には「近年の日本社会は何かおかしい?」日本が持ち味とする個性や本質の「伝統的な日本人の心から離れて行っているのではないか?」と言う危機感がありました。
これ以上の西洋資本主義の安易な受容は、日本の社会全体を悪くするのではないか、何か新しい日本独自の資本主義を指向せねばとの思いと、西洋の個人意識を重視する思想ではなく、日本人の個人の意識、即ち利己主義ではない新しい個人主義の強化が必要であると考え、270年記念シンポジウムの主テーマを「取り戻そう!日本人の心と知恵」とし、副題を 「新しい資本主義と 新しい個人主義」と提案し、みなさまに議論して頂いたことがありました。 
当時と現在の日本社会を比較してみますと、間違いなく社会には様々な歪みが進展し、世の中は数段悪くなっていることから、何かがおかしい! 昨今の日本社会は、衰退末期の日本?との思いがあって、その主テーマを再び使わせて頂きました。  
経済社会の大勢は 何が何でも「安いモノ」への強い執着と、貨幣が貨幣を生むことに執着する「カネの亡者」ばかりとなってしまったようであり、しかもその亡者も庶民のみならず、使命感や志が必要である政治家や経営者などの社会的リーダーたちの心も堕落していると思えます。 国や、企業や、家庭を守り、永続を計ろうとする意識が薄くなり、「李下に冠を正さず」の心も忘れ、企業の経営者も短い任期中の利潤追究のみに執着し、永続の視点を忘れているように思います。庶民では考えられぬような高額の収益を得ていたとか、「ホリエモン」が「人の心はカネで買える」と豪語し、介護や派遣事業分野でも公共事業本来の使命感など感じられない経営がなされています。さらに食品偽装が常態化し、巷では互いに「不信」と欺瞞横行し、何物をも奪わんか、の様相で、社会全体が全く節操の無い様相に陥っている、と言えます。
これ等の諸問題の原因はひとえに行き過ぎた西洋資本主義の安易な受容以外の何者でもないと思うのです。教育の歪みに於いても 本来の使命感が重視されるべき教師や先生を労働者化してしまったことは大きな禍根となっていると思います。
もう一点、注意すべき点は西洋資本主義の根底には知性を必要としない「力を労する」仕事に従事するものは 歴史的に奴隷の仕事であった、という側面があります。従って彼等の考え方はマニュアル以上の知性や知恵を発揮することを期待できないのです。しかし日本は全く違うことについて 後ほど触れることと致します。
更に西洋思想にはギリシャのアリストテレスの「貨幣が貨幣を生むことを計るのは自然に反する」という言葉がありますが 宗教改革以後、科学と商業経済の発達により「貨幣が貨幣を生む」ことが正当化されたのが西洋資本主義だと思います。渋沢栄一の「論語とそろばん」の思想やモラロジーの「道経一体」の考え方に代表される「経済行動に於いての道徳倫理一体」の視点は西洋資本主義の中心にはないと思います。
東洋の宗教は仏教でいえばお釈迦様は王族の出身ですし、儒教に於ける孔孟も為政者に近い知識階級の立場であり「上から目線」の気風が奥に隠されています。日本は異文化思想としての仏教・儒教を為政者や知識階級から受容し、江戸時代には幕府の政策として 多くの藩校が設立され武士階級へ、更には「梅岩心学」の様に町人や地方の農民にも広く取り入れられ、日本人の「知性レベル」の全体的向上には大変効果がありました。
しかし 続発した「農民一揆」など下からの運動は押さえ込まれて、庶民下層階級のパワーとして結集出来なかったと言えます。幕末になってやっと「若き志士たち」の力として結集し、その勢いで明治維新が起こり、その後短期間で日本の近代化が達成されましたが、民衆の意識や自覚の覚醒には繋がらず、残念な結果になっかことはご承知のことと思います。
今 経営において「人の道」や「企業のあるべき姿」を日夜学び、自らの不安や悩みを即効的に 解決してくれる知恵を求めておられるかもしれませんが 全く同じ答えはこの世に無いわけで 諸先生が述べられた「素晴らしい心」を皆様ご自身の企業文化にどう取り入れて生かすか、自助努力と工夫が必要で、答えは心の中に隠されており、それを見出さねばならないと思うのです。経営者も社員も全ての人が人間個人の立場と企業の組織の一員としての立場の「二つ」の狭間で研鑚する必要があります。
社会的動物である人間には個人に於いて 多少は二面性が見られるのは避けられませんが本来「二面性」は無い方がベストであり、共同体集団としての企業においても同じ様に、二面性が現れているかいないか、を認識することも意義あることだと思います。この二面性を仮に「表の顔」と「裏の顔」として 企業として二面性をなくすのが経営者の責務であることを もう一度最後にお話したいと思います。
次に私が信じる「日本の伝統的な心と知恵」とは何かについて聞いて頂きたいと思います。「伝統的な心」は一口にお話するのは難しいのですが レジメでは簡単に「民の竈は賑わいにけり」、手代丁稚は家族の一員、と「先義後利」、少欲知足、「武士は食わねど高楊枝」、心の安楽、の二項目を挙げましたが これらの奥に最も重要な「日本人の伝統の心」が隠されている、と信じております。
一口に「東洋思想」と申しますが日本にはインドや中国に代表される東洋思想とは異なる、独自の日本思想があると思うのです。中国の文化や国民性は「孔孟」の儒教の思想が最も嫌う功利性の強い道教にありますから、西洋資本主義と同類で功利性は非常に強く中華思想の強い自我もありますから、 自己中心的であると考えねばなりません。
日本は仏教にしても儒教にしても 受容して以来神道的土壌の中で 独自に咀嚼し吸収し、両者の良きところを日本の風土に合わせて受容し、神儒仏に一貫通じる思想や文化を構築してきたと考えます。私はその独自に築いた「伝統的な心と知恵」を失いたくないと願っている次第です。
日本には古来、為政者の心には国民を思う心として 「民の竈は賑わいにけり」の心があり その心は天皇制にも伝承されておりますが、商業や経済が発展した江戸時代にも商家の主人の「手代、丁稚は家族の一員」という考え方として多くの商家の家訓として継承されておりました。
「民の竈」の心とは、仁徳天皇の御歌「高き屋にのぼりてみれば 煙立つ 民の竈は賑わいにけり」と歌われておりますが、難波高津宮から遠く市街を眺めて煙が立ち昇らないのを見られて、民は貧しくして焚くものがないのではないか、都でこうなら地方ではさぞ酷い状況であろうと仰せられ、向こう3年間「税」を免除されたそうです。その間天皇ご自身も衣も新調せず、住まいの修理もせず、堪え忍ばれたそうで、この歌はその3年後に再び市街を眺められて煙立つのを見て大変喜ばれて歌われた歌とのことです。天皇の民を思う心篤く更に3年間「税」を免除され、庶民の信望大変厚かったと日本書紀に記述があります。
「梅岩」の言葉は後ほど「心学」紹介の所でお話しますが、経営者と社員の労使一体の心は国家のリーダーの「民の竈」の心から、商家の使用人も家族の一員とする所を経て生まれた「伝統的な心」であったと言えます。しかし 今や 企業の生きる道は大きく変らざるを得なくなったことは認識せねばならないと思われます。
もう一点は「少欲知足」「武士は食わねど高楊枝」と言われ、物の豊かさより心の安楽を求める「義を先にして利を後にする」「先義・後利」の心です。
東洋には古来、「商行為」の本質を卑しむ思想があり、紀元前の孟子の、「義を後にして利を先にすれば奪わねば満足しなくなる」という言葉があり、更に荀子にも、「正義を先にして利益を後にするものは栄え利益を先にして正義を後にするものは恥をうける」と言い、江戸時代広く日本人の心の底にも深く根付き存在していました。
また「高楊枝の心」は 江戸時代の武士階級も商人に経済を牛耳られながらも 堪え忍び、武士道の心を守り 大勢として幕末・維新まで 貨幣の誘惑によくぞ「やせ我慢」を通したといえましょうか。西洋資本主義が功利的、利潤追求型であるにもかかわらず 維新以後も日本の近代化の過程に於けるリーダーたちの姿勢は 時代環境がそうさせたにしても確かに使命感が主たる牽引力であったと思います。しかし 今や「道義・倫理」など無視する、なんでもありの節操・節度の無い社会になってしまったようです。
しかし世の中が変わっても人間社会であることには変わりが無いわけですから、「節操・節度ある」社会へ戻す努力を 企業や国民一人ひとりが「一灯照隅」でやらないと社会は絶対に変らないのではないでしょうか。主権者としての 国民一人ひとりの自覚を新たにせねば国の衰退を止めることは出来無い様に思います。「先義」を捨てて「先利」の視点で判断すれば更に大きな落とし穴に落ち込むことになるでしょう。
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