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  「平成26年新春講演会」講演録 (平成26年1月23日)
今という時代と経営者の使命
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       講師 経営共創基盤(IGPI)代表取締役CEO 冨山 和彦 氏

円が安くなるとグローバル経済圏でやっているグローバル製造業である自動車や電機などの業績がよくなります。これは輸出が伸びて良くなっているわけではないです。日本の経常は大変な大赤字、貿易収支は赤字で輸出が増えておりません。今グローバル製造業の売上額の大体半分から3分の2は海外です。利益に至っては8割から9割が海外です。この換算率が良くなるのです。同じ100ドルを儲けたのが、80円と105円では2割以上、上振れするのです。連結決算の換算率が円高になると凄く良くなる。それで業績が良くなるのです。  
ですので、Jカーブ効果で国内からの輸出が増えれば、国内での実需が強くなり、皆さんのほうに影響が出てきてトリプルダウンが起きるのですが、これはあまり起きていないはずです。いやあまり起きないのです。もう製造業は海外向けのキャパシティを国内にあまり持っていないので、業績は向上するが増産は一定レベルで止まってしまうのです。グローバル経済圏の中でぐるぐる回ってしまうということです。
ですから、実はこの先が難しいのです。ここまでは来るのですが、この先は日本のローカルの経済圏の賃金が上がり、消費が増えるという所に持って行かなければいけない。昔の加工貿易立国の時代であれば、トヨタさんにしても、パナソニックさんにしても、国内にほとんどの工場を持っていましたから、下請も国内だったので、円が弱くなって売り上げが増えれば、そのまま下請、孫請の稼働率も上がって、そこで景気も良くなって、賃金も上がるという好循環が作り易かったのです。  
ところが、今日はそういう産業構造になっていないので、国内向けのサービスをやっているところにそれが及ぶかというと、そう簡単にはいきません。現在 連合や経団連に加盟している企業がGDPに対してどれだけの割合を占めているかというと極めて小さいです。労働者の労働組合の組織率は20%切っており、連合と経団連で入れてもベアをやっても、その影響は20%に達しないわけです。ですから、ここがアベノミクスがこれからぶつかる壁です。この壁をどう越えるかというのは、政策的課題になるのですが、これは簡単ではないのでどうなるかわかりません。  
また 常にいろいろな地政学的なリスクがどこの国でもあるわけで、今はタイがまた怪しくなっていますが、成長領域は一般的にアジアといわれます。  
私は、アジアの成長に関して超長期では比較的楽観派です。中期は難しいといいましたが、超長期になると確かなことがいくつかあります。例えば、人口動態の予測は大体当たります。日本の女性が今から急に一生懸命子どもを生んでも、この何十年間の出生率は1点台ですから、日本の場合、人口は減っていくのです。こればかりはしようがないです。  
そういう意味でいうと、人口動態は比較的予想がし易いのですが、過去何十年間にわたる長期の経済成長を分析しますと、経済成長率あるいは成長とほぼ比例するのが、「人口」と「1人当たりの生産性」です。この二つの因子で、どっちが鶏か卵かというのは難しいのですが、ほぼこの二つの因子と相関するのです。そうすると、人口が潤沢にあって、教育水準が高いか右肩上がり向上し、1人当たりの生産性(≒平均的教育水準)を見ると、やはりアジア経済圏になってしまうのです。要は、インド経済圏、中華経済圏ということにどうしてもなってまいります。  
ヨーロッパというのは、もともと人口の少ないところです。歴史的にヨーロッパは小麦です。小麦の生産性つまり単位当たりの収率は米よりも桁違いに少ないです。さらに 小麦というのは毎年作れない。稲作というのは偉大であり、毎年一定面積当たりで多くのカロリーがもの凄い勢いで採れるのです。アジアは稲作地帯で人口は昔から多い。もちろん中国もあと10何年か20年くらいで人口は減り始めるのですが、今のところはまだ増えているわけです。  
かつ、教育熱心というのも当たり前ではなくて、自分の親が自分の田畑を売り払っても子どもの教育にお金を使うというのは、日本的には比較的普通な感じですが、世界ではなかなかないわけでアジアの中で最もそれができているのが日本なのです。これは明治維新の頃もそうですし、昭和20年以降の経済復興も全く同じ理屈です。  
天然資源というのは、ついつい目を奪われがちですが、過去の歴史において長期的な成長をほとんど規定しておりません。1945年8月15日、日本国内の生産設備は徹底的に破壊され、工場は全部爆撃で壊され、ロジスティクスもモノを運ぶ設備もないわけです。当時、唯一日本にあったのは、教育水準の高い日本国民だけです。恐らく天然資源において、インドネシアは日本よりはるかに恵まれていたわけですが、40年後、50年後、どこが最も成長したかといえば日本です。ですから、これは圧倒的に人口と教育水準が大きいです。  
そういう意味でいうと、長期的には結局そこに収れんすると思うのです。アジア経済圏も非常に変動が激しくて不安定な経済圏です。もちろん人種、政治的な問題、あるいは宗教など非常に複雑に入り組んでいるという問題もあります。それから、今BRICs各国が苦しんでいるのは、経済学の言葉で中進国の罠(ミドル・インカム・トラップ)です。開発途上国の経済が成長すると、ある段階で輸出型経済から内需型経済へのソフトランディングが必要です。日本では、それが1970年代に起きております。  
成長段階として輸出型経済まではいいのですが、内需型経済に移るためには厚みのある中間層がないと内需型に移れないのです。理由は簡単で、幾ら超大金持ちがいても、1人で毎日コーラ100本も飲めないです。1人で100台の車を乗り回せないのです。中間層が育ってくれないと安定的な内需型の経済には移行できないのです。日本は、幸いなるかな、成功した時期においてはあまり日本のライバルや、後からついてくる人(国や地域)があまりいなかったのです。もちろん台湾などがありましたが、日本よりはるかに経済規模が小さかった。従って、日本は内需型に移行する過程においても輸出強国でもあり続けました。  
ところが、今、中国を考えて見るとわかるのですが、低価格品はもう中国では作っておりません。既にベトナムに移しり始めてております。グローバル化が進んでしまったものですから、直ぐ世界中にライバルが現れるのです。ちょっと賃金が上がるともの凄い勢いで空洞化が始まってしまいます。これが起きると新興国においても格差問題が起きてしまうのです。  
日本は加工貿易立国で凄く上手くいった時代に、むしろ格差が縮まります。ずっと労働力不足だったので、要は「三丁目の夕日」の世界です。どんどん太平洋ベルト地帯に人口が集まって、そこで賃金が上がってまいりました。ところが、今のBRICs諸国は、ちょっと賃金が上がると今度は仕事が海外へ出てしまいます。ですから、同時に格差問題に悩むことになるので、なかなかスムーズに内需型の経済構造に移れないのです。そういった問題によって、中国やタイでも様々な問題が起きてしまいます。ですから経済状況も非常に不安定です。しかし 日本国内はどうしても人口が高齢化と縮小方向ですから、なかなか成長の果実が得られないということになるので、不安定だからといっても、そういったマーケットにも挑戦しなければいけない、という現実に直面していくわけであります。
変動は激しいし、いろいろなこともある中で、バブルが時々弾けてしまう中でどうやっていくかということになるわけです。  
経営で何が大事かということになるわけですが、経営環境は時々危機が起きます。また新興国は成長するのでなかなかダイナミックです。しかし ダイナミックというと品がいいですが、乱暴で下品な市場とも言えます。  
冒頭に述べた父親が実はトッパン・ムーアで、メインの仕事は二つありまして、購買の仕事とアジアの仕事です。アジアでトッパン・ムーアが展開していく仕事だったので、私も子どものときからアジアのビジネスを、父親の背中を見ていたわけですが、当時から大変でした。今日も大変ですが30年前はもっと大変な状況で、かなりワイルドな中で戦わなければいけないということだと思います。常に「嵐の中で船を漕ぎ出す」ようなことをやらなければいけないわけです。そして「船を大嵐の中で漕ぎ出さない限り」何も得られないということになります。
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