大気汚染の防止 - 印刷産業の環境対応早わかりNo.4

VOCを発生させない改善策を実行しています


大気を汚染する物質としてVOC(揮発性有機化合物)が問題視されています。「大気汚染防止法」では、VOCのことは「大気中に排出され、または飛散したときに気体である有機化合物」と定義されているのですが、印刷産業では、業界の自主規制によってこのような有害物質の排出抑制に努めるとともに、代替物質への切り替え、除去装置(脱臭装置)の設置などで万全を期しています。

印刷産業においてはインキや湿し水、一部の洗浄剤、表面加工剤、製本用接着剤などがこれに関係してきます。印刷インキに含まれるVOCは、すべて印刷後の乾燥工程で蒸発しますので、大気に漏出しないよう排ガス自体を回収処理するのが基本です。オフセット輪転印刷工場やグラビア印刷工場では、悪臭を発する物質が大気に排出されないよう、印刷の際に発生する溶剤や乾燥による排ガスを、触媒や吸着材によって回収もしくは再燃焼しています。

VOCを含んでいない資機材・薬品に切り替えることは、それ以上に重要です。オフセット印刷の場合は、アルコールの含有率が小さいNon-VOC湿し水の採用や密閉型循環装置の導入、あるいは水なし印刷方式、紫外線硬化型のUV印刷方式にすることが有効となっています。またインキローラーやブランケット胴を拭くための洗浄剤についても、自動洗浄装置を採用したり低VOC型の洗浄剤に切り替えたりといった工夫をしています。

印刷インキについては揮発性ゼロをめざして、従来の石油系溶剤からアロナフリー溶剤への転換、大豆油インキ/植物油インキの採用と着々と歩みを進め、現在ではNon-VOCインキが主流となっています。グラビア印刷の場合は水性インキへの転換をはかっています。

大気汚染につながる特定化学物質の排出量を管理する法律に「PRTR法」があります。人の健康や健全な生態系に有害となる恐れのある化学物質を、事業所から排出しないようにすることが狙いなのですが、印刷産業では、この法律の規制に該当しないインキを使用すること、対象物質に指定される溶剤を使用しないことなど、ここでも適切な対応を心掛けています。
 

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