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 日本フォーム印刷工業連合会 業務委員会主催
       平成21年度第1回講演会 
     
「日本でいちばん大切にしたい会社」
       法政大学大学院教授 坂本光司 氏

 では、その本の中に何を書いたかです。『日本でいちばん大切にしたい会社』です。五人に対する使命と責任を果たそうと、全社員一丸となって、真っ赤になって、火の玉集団と化して、懸命に生きている会社を私は「日本でいちばん大切な会社」と書いたのです。「五人」と書いたのです。
 その「五人」にも驚きがあったかもしれません。もっと驚きがあったのは、「順番」でしょう。「順番」がいままでの経営学と違っていたからでしょう。いままでの経営学のなかでは、その人の幸せなんて論ずる必

要がないという方も、私は日の当たる場所に出してあげたからです。これが多くの人の感動、感嘆、感銘を生んだかもしれません。
  お読みになっている方も多いでしょうから簡単にいたしますが、「五人」というのは、その本の中にこう書いておきました。
  「企業がいちばん幸せを念じなければいけない人は、社員とその家族である」何ものにもかえがたいと書いたのです。

 1番目に「社員とその家族を幸せにする」と書きました。
 「社員とその社員を支えている家族の幸せを念ずることが企業経営である。社員とその家族の幸せを追求することが企業経営の極意である。社員とその家族の幸せを念じ、かつ実践している会社に不況という嵐が訪れた歴史はない。もしも『わが社はそうやっているけれども』というならば、思いが足りないという理解が正しい」と書いた。これがいちばん大切だと私は書いたのです。
 2番目に「外注先・下請企業の社員を幸せにする」と書いたのです。「わが社が本来やるべき仕事をやってくださっている方々の勤めている社員とその家族の幸せを念じた経営が正しい」と書いたのです。
 当たり前なことです。原理原則、自然の摂理ではないですか。いやらしい仕事、値段の安い仕事、単純な仕事が外に出るから、きょう注文して明日持ってこいという仕事、1個とか2個の仕事、粉塵が出るとか、振動が出るとか、音が出るとか、そんな仕事が外に出るから。しかし、その仕事がなければ商品ができないのです。それは商品の中身を構成している一部の部品かもしれませんが、重要な機能部品ではないですか。それがあるからこそ、自動車だって、家電だって、パソコンだってできているわけです。
 しかし、私からすると、ほとんど虫けら同然です。なぜ自分の会社が10%で、下請けさんから上がってくる見積書がゼロでなければいけないのですか。なぜ3%でなければいかんのですか。なぜ5%で罪深いのですか。そんなことはおかしなことだと思います。
 あなたの会社の前工程をやっていらっしゃるのです。ユニフォームが違う、勤め先が違うだけのあなたの社員ではないか、というのが私の経営学です。
 私の話はおかしいと思いますか。
 もし私が下請企業の社員だったら、もしも私が私の両目が見えなかったら、私がもしも学生だったら、という思いで私は常に話をいたしますし本を書きます。それがなかったら終わりです。
 だから2番目に「下請企業の社員とその家族」と書いたのです。いままでずいぶん「下請けさん、協力工場、便利だ」といわれている会社に、診断とかアドバイスにいきました。今はなかなかその時間が取れないですが、見積もり能力がない方々が多々あります。本当はそれが問題です。若気の至りで、「困っていらっしゃる」というから、「ああ、わかった。じゃ、私が徹夜してつくってあげる」といいました。そんなことが若いころよくありました。私が見積書を書くというのは、「過ぎたるは及ばざるがごとく」ということになります。時間かけてもその能力はつけさせなければならない理由があるのです。
 そういうなかで、昔だったらインターネットがありませんので、例えば「トヨタさん、スズキさんと取引するんですか」といったら、すぐに私は、有価証券報告書は、重要な会社は全部自宅にそろっていますから、それを出して、その会社の損益計算書、製造原価明細書、貸借対照表、これを全部調べて、ああ、この会社の売上高に占める販管費の割合は20%ある、ああ、そうか、この会社の利益率は8%なのか、と。もちろん工数計算をします。それから時間チャージ、分数、レート、そのあとにその会社が持っている管理コスト、それから適正な利益を掛ける。相手が20%だったら、私は、今言った賃時数×工数で出てくるものに対して、当然それに掛ける1.2 、ということは販管費20%を掛けていることです。それにもしも利益率が相手がうんぬんなら、それに私は「1.08」と書きます。「08」と書いて見積書を出します。ずいぶんとこのことをやりました。100 社以上やりましたか。
 しかし笑ってしまう話ですが、一社も私の見積書が通った歴史はありません。私の計算方式が間違っていますか。間違っているのは発注者です。
 彼ら、彼女らも、幸せに生きる権利があるか、です。彼女たちが、彼たちがいなければ、私たちはアセンブリー商品ができない。そのことに思いをはせている会社は少ない。
 しかし、きょうこれからご紹介する会社は、そこにも心かけて、やさしい手をさしのべている。その会社をご紹介いたします。その本に私は書いております。
 創業して以来、コストダウンしたことがない。創業以来、下請けさんを変更したことがない。外に出した仕事を内作したことはない。創業以来、円高であってもコストダウンしたことがない。下請けさんから出てくる見積書に、利益欄が「2%」あるならば、「2%でやれないでしょう」と5%に書き換える会社があるのです。
 正しき経営は滅びません。不況になると、その会社の本性が見えるから、今、いい時です。よく見たほうがいいと私は思います。好況のときに見えないのが、不況になると本性が見えてきます。
 3番目は「顧客」と書いてあります。4番目が「地域社会・地域住民」と書いてあります。
 もし地域に独居老人、80歳、90歳のお年寄りで家族と離れて一人で暮らしている人が、会社の同じ町内会でいるようだったら、会社の社員が手分けしてでもいいから一声でもかけるようなことをしてあげたらどうですか、というのが私の提案です。
 もしも会社があるその地域に、障害を持った方がいるならば、雇用のチャンスをつくってあげてくださいという。そんなことを地域住民は見ている。「あの会社はやさしい会社だ」「あの会社はおれたちの会社だ」「あの会社があるから、あの土地は幸せになっている」と、そこに感動が発生するのです。
 私たちは、価格競争とか、品揃え競争をしたらだめです。そんなのは大企業に任せればいいのです。むしろ「心」というか、サービスというか、顔が見えるというか、「この子はこの子」というのが正しいです。「ちりも積もれば山となる」で十分ではないですか。47都道府県にたった1社のお客さまでも47人もあります。
 中小企業の生きざまを忘れている大企業は、深みの魚釣りなのです。つまり、ロットの大きいものをやるのです。あまり品数の多いのをやってはだめです。回転がきかないから。駆逐艦、軍艦ですから。私たちは、魚でいうと雑魚みたいなものですから浅瀬で泳ぐわけです。浅瀬ですからロットの大きいものをやったらだめなんです。クジラが浅瀬にくればクジラが干上がってしまいます。我々が深みにいけば、クジラに食われるのは当たり前の話です。
 しかし、多くの下請けさんは、「なぜ この仕事をやらないんですか」といったら、「いや、先生、数が少ない。納期が早い」。「いや、それがあなたのやる使命ではないですか」とよく言うことがありますが、「面倒くさいではないか。金ばかり掛かるじゃないか」といって、自縛からなかなか抜けきれない会社がいっぱいありました。

 最後に「どうでもいい」と書いて「株主」と書きました。これは従来の経営学とはまったく違います。五人に対する使命と責任を果たそうと努力すれば、5番目は、間違いなく訪れます。
 私が「お客さまよりは下請け社員のほうが大事だ」と書いた理由は、その本の中に二つ書いておいたのです。
 読んでいなければ、一晩で読めます。恐らく読み始めたら止まらなくなってしまうような本でしょう。ただ、人前では読まないほうがいいでしょう。涙があふれてくるでしょうから。この本を読んで涙しなければ、それ自身が問題と思ったほうがいいです。そんな人に社員はついてきません。心が熱くないからです。涙するはずです。
 「顧客よりは社員、外注さんの社員のほうが大事だ」と書いた理由の一つは、簡単にいいますと、原理原則、自然の摂理、白は白、黒は黒、正しいは正しい、間違っているのは間違っているのです。
 私は決断をするときに、都合がいいか都合が悪いか、千載一遇のチャンスか、人がやっているかやっていないか、一番になれるかなれないか、まだ成長するかしないか、そんなばかなことは考えません。すべて正しいか正しくないかです。
 この仕事が、このやり方が、五人にとって、特にその社員とその家族の幸せにとって正しいか正しくないかです。下請けさんの家族にとって正しいか正しくないかです。
 先ほど言いました二つのうちの一つは、自分が所属する会社に程度の差こそあれ、不平・不満・不信感が、存在する社員がニコニコ顔で赤の他人のお客さまに感動的な接客サービスができると思いますか、ということです。
 自分が所属する組織、会社に不平と不満と不信感が満ち満ちた社員が、どうしてその組織の業績を高めるためにニコニコ顔でお客さまが感動するようなサービスを提供できますか。
 できるはずがない。お客さまはよくわかっているのです。ただ、文句を何も言わないだけです。ただ黙って去るだけです。黙って去って自分の心に置いておけばまだ救えるのですが、そういう方に限って人脈が豊富ですから、そこで行われたいやなサービスをまるで伝染病のように仲間に伝えていくのです。結果的に会社は腐っていくのです。不況ではないのです。
 好況・不況は社員がつくっているのです。お客さまがつくっているのではないのです。もっというと、社員が燃えるか燃えないかというのは、その社長さん、あるいはそのまた上司、部長さん、課長さん、その方々によるのです。その方々によって好況と不況はつくられるのです。
 有効需要なんかいくらつくったってだめなのです。赤字国債を乱発するだけの話です。有効供給をつくるべきなのです。
 ということは、好況・不況を克服するのは企業しかないということなのです。政策ではもはや限界があるということです。今いったように、自分が所属する会社に愛情を持っていて、自分が所属する会社に感動をもっていなければ無理です。感動していない社員が、どうして赤の他人に感動を与えることができるのですか。
 その組織に所属することの喜びをかみしめられないような、不安と戦っている男と女が、どうして赤の他人のお客さまにニコニコ顔で心からわき出る、体からわき出るようなサービスができますか。そんな芸当ができたら人間ではありません。
 だから、社員のほうが大事だと書いてあります。

 もう一つ、こう書いてあります。企業は「市場創造業」なのです。「市場対応業」ではないのです。新しい価値を自らの力でつくることなのです。人がつくった価値を「仕事くれ、仕事くれ」ではありません。
 共同でもいいのですが、お客さまが、「こんなことがあったら」「こんなものがあったら」と、お客さまを目の前に「感動」という驚きを提供することです。「こんな商品があったのか」「こんな使い方があったのか」「これだったんだ」と。つまり、市場をつくることです。
 もっというと、例えば絨毯に角砂糖でも置いておきましょうか。角砂糖を置いて、はじめはアリはいません。1時間たってくれば、どこからわいたか知らないけれども、アリが1匹か2匹か出てくるでしょう。それと同じです。市場をつくるのです。もともとアリはそこにいなかったのです。
 ですから、価値あるビジネス、価値ある商品、価値あるサービスは、お客さまが追いかけてくるのです。その価値あるサービス、価値ある商品をつくるのはだれですか。お客さまですか。違うのではないですか。何もいなかったのですから。つくるのは社員なのです。
 感動的価値が創造できなかったときに不況がやってくるのです。感動的価値をつくるのは社員です。ですから、社員が上に決まっているじゃないですか。お客さまによって不況はつくられません。会社がつくる。

 本の中で二つしか書いていないと思いますが、実はもう一つあります。それは、司会の山口さんがいってくださったように、6,000 社以上の会社があって、いまだに脳裏にこびりついている会社が600社あります。つまり1割の会社です。
 600社の会社が、好況であろうが不況であろうが、お客さまが全国から、場合によっては世界から追いかけてきます。「この会社がなくては、私たちはまともな生活ができません」と書いています。「不幸になる」と書いてあります。
 その会社が「五人に対する使命と責任を果たそうと努力している」その現実を私が知ったからです。それぞれが徒党を組まない。バラバラです。本物は徒党を組みません。
 結果的に自分流にやっているので、正しいか正しくないか、わからないといいますが、私にいわせれば、私は会社を山ほど回っているから「正しいですよ」といえます。そうすると、安心しています。「これからもこの道をひた走ります」といっています。だから私は「社員のほうが大事だ」と書いたのです。下請けさんもそうです。

 本の中では私は、5社くらい代表的な会社を書いておいたのです。その5社のお話をいたします。その5社に入る前に、続編もたぶん書くのではないかという会社を2、3社紹介して、それから本の中に入ります。

 続編に書く予定の会社は20社あって、それから5社に絞り込むのが大変なのですが、そのうちの何社かをご紹介します。
 再来週、北海道札幌に行ってきます。それは本を書くための調査、取材です。もちろんゆっくりする時間の余裕はありませんので日帰りになります。その会社は「富士メガネ」という会社です。
 名前のとおり、眼鏡の小売店です。眼鏡の小売店ですから差別化は難しい。価格といっても、富士メガネさんは北海道を主として展開している会社ですから、99%のお店は北海道にあります。その意味では「眼鏡市場」などの全国チェーン店ではありません。しかも製造していません。大量仕入れがききません。製造小売りではないから、差別化がなかなかできない。あるいは、大資本の会社ではないから品揃えも豊富になかなかできない。
 では、普通にいうならば、この不況のなかでおかしくなっているはずです。なぜならば、眼鏡の業界のデータをみると、昨年と比べてここ数カ月の売上高は2〜3割減少しています。明らかに「買おうと思ったけど、いや、修理して直そう」と、買い控え運動が起きていることがすぐわかります。自動車もそうです。離れてしまっている人が最近多いですから怖いです。
 しかし、この「富士メガネ」さんは増収増益なのです。品揃え豊富ではないのです。値段は総じて高いのです。それなのに、なぜお客さまがここにわんさと訪れるのか。心に響く経営をやっているからです。頭にもお腹にも響きません。心に響く経営をやっているのです。お客さまは賢いです。お腹いっぱいです。すきすきなのは心です。これに応える経営をやっているからです。
 どんなことをやっているかというと、山ほどありますが、簡単に二つだけいいます。
 私もそのお店で眼鏡を買ってきましたが、こんな高い眼鏡を買ったのは生まれて初めてですが、それしか貢献しようがないと思ったからです。これまでのこの会社に感謝しようと思ったのです。感謝する方法は消費者になるしかないと思ったからです。非常に高かったのですが、今は幸せに満ちています。この会社に貢献できたからです。私の仲間もみんなそうです。そこで一斉に買ったからです。
 いてもたってもいられなくなったのです。あまりの正しさに。浪花節でもなんでもない。心に触れている会社を私たち、お客さまは求めているのです。

 また横道に逸れますが、きょうのように、地域の消費購買のオピニオンリーダーという女性の方を約400 人前にして先日、話をいたしました。地域の錚々たる女性の方々が、終わってから懇親会のときに私を取り囲んでくれて何と言ったかというと、「私たちがこれからどう行動したらよいか完璧に理解できました」という。
 「いい加減なことをしている会社の商品は買わないことですね。いい加減なことをしている会社には、息子、娘、わが子を就職させないことですね」といってくれました。いい加減なことをしていると、恐ろしい未来が待っているという感じです。これは大手企業も例外ではないでしょう。
 一方で、先ほど言ったように、57人の会社に2万人の若者が追いかけてくる。しかし、彼ら大手企業や、有名ブランド企業が戦えなくなったら、この国は終わりです。モノづくり産業の50%は下請けですから、大手が頑張ってもらわないと困るのです。
 その大手が賢い消費者によって選ばれようとしているから、怖いです。賢くなければ簡単に解決する不況ですが、賢いから簡単に解決しません。これがいやな時代ですか。まともな時代ではないですか。
大手は気づくべきです。大手企業から優秀な男と女が「おまえもか」というくらい、早期退職制度とかありますが、そのときにいい職場が得られないとなかなか辞めません。優秀な男と女が辞めるということは、余計悪化するということになるかと思います。

 ともかくその眼鏡屋さんにいったときに心に響くことがあった。その一つは、私がいったとき、おじいさん、おばあさんが来ていました。その方が「眼鏡を買いにきた」といっていましたが、私は耳を立てて聞いておりましたら、最終的にその方は眼鏡を買わなかった。眼鏡を買わないということを決断したのは、おばあさんではなかった。店員だった。よく時間かけて調べて、「古いめがねだけれども、部品もたまたま合うのがあるから、大丈夫です。目もそれほど進んでいないし、十分使えるから」といって、5万、10万の眼鏡を買わさずに、修理で帰しています。たまたま前回、私が取材にいったときにも、その光景を目の前で見ました。
 ああ、この会社はそういうことをしている。というのは、一番付加価値を上げなければいけない一階の売り場の真ん中が修理広場であったということがわかりました。口でいっているだけではない。一番売上を高めなければいけない1階の売り場の、一番目立つ真ん中に修理道具が山ほどあって、修理のプロフェッショナルが数人いて、そこで修理をしていたからです。この会社の姿勢が私はよくわかりました。これがまず一つです。

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