「SMATRIX」で次世代型印刷産業をめざす

スマート社会への貢献

「SMATRIX」で次世代型印刷産業をめざす


■『スマート社会への貢献
「SMATRIX 2020」-スマート社会に貢献する印刷産業-』より
(発行:社団法人日本印刷産業連合会 発刊:平成23年9月)
 

1.産業基盤のパラダイムシフト

知的なコミュニケーション基盤として、スマート社会における新たな役割を担うことこそが、次世代型の印刷産業に課せられた責務——このような観点に立った産業ビジョン「SMATRIX 2020」が、日本印刷産業連合会の手でまとめられています。そこで示された提言は現在、印刷産業がスマート社会に貢献できるよう、産業基盤そのものをパラダイムシフトさせていくための力強い指針となっています。印刷産業自身のスマート化によって、産業の再構築をめざすべきことを示唆しているのです。

スマート社会においては、幅広くかつ柔軟なビジネスが求められることから、大きな視点で印刷産業のグランドデザインを描くことが重要になります。印刷産業を一定の枠にはめて、一つのかたちとして提示する意味はありません。それぞれの特徴をもった印刷会社が、独自の強みを発揮しながら棲み分けていくという成熟した産業になることが望ましいと考えられます。

印刷産業内での同質的な競争から異質的な競争へシフトしていくためには、自社の特徴を極めるところから始めます。製造力は競争力の一つであり、製品面での強みは市場における優位性を保つ力となりますが、技術や品質だけでの差別化は難しいといえます。そこで、顧客との信頼関係を強固にして、ソフト分野にビジネス領域を拡大していくという方向で、産業像を見直す必要が出てきたのです。

得意先を通じて業界のノウハウや仕組みを熟知し、それを武器にマーケティング関連サービスの提供、マルチチャンネルでのソリューション提供をおこなう業態に変えることで、事業を強化していけるという考え方です。エリアマーケティングの視点で地元企業、地域を支援する方向、システム管理やフルフィルメントに関する一括アウトソーシングの受け皿となる方向、なども考えられるわけです。

印刷産業の進化は、以下の4つの方向性で整理することができるでしょう。

1 デジタル化/ネットワーク化
 印刷工程や管理の仕方の改善、情報流通の変化を受けて、印刷ビジネスの概念を変えていく。

2 高機能化
 包材、建材など産業資材分野のニーズに沿う高度な知識を育て、顧客と緊密な関係を築いていく。

3 ソリューション/アウトソーシング
 顧客のビジネスの一部を取り込み、代行・支援することで、顧客に課題解決というメリットを提供していく。

4 ビジネスモデルの変革
 上記の3点と連携させ、かつ他の関連業界を巻き込みながら、高度な印刷産業に向けたイノベーションに取り組んでいく。

 

2.印刷産業が取り組むべき方向

印刷産業は、すでに「印刷」を媒体とするモノづくりから「情報」を媒体とするサービス業へと変貌しつつあります。実際に商品企画、販促宣伝、流通管理、データベース構築、品質管理など、あらゆる情報に深く関わっています。「情報」を含めた広域の媒体を事業主体と捉え直して、多次元的な情報戦略をビジネス展開しているのが現状です。<モノづくり+情報サービス力>によって、スマート社会の実現をお手伝いしていくことが、印刷産業に課せられた重要な任務となります。

このような理念のもと、数多くの事例研究によって実証された、これから取り組むべき方向性が次のとおり提示されています。
 1.コラボレーションに向けた仕組みづくり
 2.リスク対策
 3.サステナブル社会に向けての印刷イノベーション
 4.事業・技術伝承を可能にする人財活用の仕組みづくり
 5.グローバル化する印刷市場への対応
 6.多核化する印刷産業としての展開
 7.グローバル化・ネットワーク時代における知的財産戦略

これらのなかから、とくにコラボレーションに向けた仕組みづくり、多核化をはかる経営戦略の選択の2点をご紹介しておきましょう。

印刷産業は、受注生産の成熟型製造業として印刷技術、設備性能、製品品質が均質化して、差別化しにくい企業体質になっています。こうした現状を打開するには、強みをもった得意分野への専業特化、ビジネスネットワークを活かした同業者あるいは印刷関連企業との分業化(連携)をはかる必要があります。

個々の印刷会社レベルでは、顧客を支援していくという視点で経営資源を新たな製品・市場に展開し、成長をめざしていかなければいけません。事業を多核化する経営戦略としては、①水平型(高機能製品の企画提案など)、②垂直型(川上・川下工程を含めたトータルソリューションの提供など)、③集中型(印刷メディアと電子メディアのハイブリッド化など)、④集成型(顧客価値の創造につながる新分野への進出など)——が考えられます。
印刷産業主要団体概要のコンテンツ一覧
日本印刷産業連合会
日本印刷産業連合会の沿革・組織の紹介
「SMATRIX」で次世代型印刷産業をめざす
スマート社会への貢献 「SMATRIX」で次世代型印刷産業をめざす
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業態変革を実現して戦略的なメディア産業へ
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情報価値創造産業「Printing Frontier 21」が基本路線を示す
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多様なビジネスモデルを掲げて挑戦中
製本業界 多様なビジネスモデルを掲げて挑戦中
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