日本フォーム工連・技術委員会セミナー記録

 技術セミナー
マーケティング2.0時代のダイレクトメール

講師 横 田 智 治氏
その3
株式会社 アイ・エム・プレス 
営業企画チーフディクター
 
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 次に、嗜好品のメーカー、具体的にはJT、日本たばこなのですが、新製品である高付加価値商品の周知を目的に実施したDMキャンペーンです。内容的には、小冊子の送付からサンプル請求、サンプル発送というステップを設定して、サルブルを受け取った人だけがアクセスできるWebサイトも用意して、サンプルを試した人の声を集めました。それからWebサイト経由限定のクローズドキャンペーンも実施したということで、Webとの連動の好例として取り上げています。実際にDM発送後、売上が伸びて、質の高い顧客の声を収集できたことで、その後の製品開発にも役立ったということです。
 
 3番目は近郊、町田市なのですが、個人経営の家電販売店が販促活動の効率化のために行ったDMです。最近、家電の世界は、YKK、ヤマダ電機、コジマ、ケーズデンキですか、それからビックカメラとかヨドバシカメラとか大型の量販店が中心で、昔ながらの街の電器屋さんは大変苦労しています。こちらのお店も例外ではなく90年代の後半、だいぶ業績を落としたということです。そこで、こちらのお店ではそれまでの売上重視から転換して粗利率の向上に取り組んだそうなのです。具体的には、それまで蓄積していた約3万件の顧客世帯データから、5年以内の買上額1万円以下の部分を全部捨てて、残ったリストを表のように累計買上額×最新購買日で9分割したのです  
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  ね。それで、A1、B1、C1といった上得意顧客は最低月1回訪問、A2、B2顧客は2カ月に1回訪問という形で、関係性を深めたということです。ただ、その他の顧客に対してもまったくアプローチしないのではなく、DMだけは送り続けるということで、選択と集中型のセグメントマーケティングと、小さな売上をコツコツと積み上げるいわばロングテール型のマーケティングを両立する中で、うまくDMを活用している例としてご紹介しました。ちなみに週末に行っているイベント用のDMではブレゼント、これは、たまたま昔、北海道の男爵いもが大量に手に入ったので配ったところ、大変好評であったということから、毎回食品らしいのですが、そのプレゼント引換券を同封していて、そのレスポンス率、この場合は来店率ですが、何と7%〜15%にもなっているということです。中には食品だけもらって帰る人もいるようでが、日本人は結構いい人が多いので、何か買って変える人の方が多いということです。  
 
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 次にダメなDMについてです。さすがに具体例は問題があるので、DMコンサルタントの有田昇さんという方が挙げられている9種類のダメDMについてご紹介します。 ひとつ目は、いかにも「DMらしいDM」です。いかにも広告チックなDMは開封しないでゴミ箱行きですよね。ちなみに先日、健康食品で有名なやずやの方の講演をDVDで拝見したのですが、これまでで最もレスポンスがよかったDMは普通の白い封筒で裏に社名と社長の名前を筆記体で印刷したDMだったそうです。内容がわからなければ一応開けてみるのですね。最近は有名になってしまったので、そういうDMは送っていないということですが。
 2番目、「ベネフィットが感じられないDM」です。やっと開封してもらったとして、そこで紹介している商品やサービスを利用するとどんなよいことがあるかを具体的に示していないDMはダメだということです。 3番目は「レターのないDM」。DMも手紙の一種ですから、発送主体である企業から届け先に対するパーソナルなメッセージが必要だということです。ラブレターにしても「ボクと付き合えばこのようなメリットがあります」というだけではだめですよね。いかにアナタを愛しているか、情熱的に語りかけなければダメだということでしょうか。
 4番目は「オファーがないDM」です。そのDMを受け取った人ならではの特典。そういうもので「選ばれた」感を演出しないと、人はなかなか反応してくれないということです。
 5番目、「申込書が複雑なDM」です。素晴らしいレターやオファーでやっとその気にさせたのに申し込む方法がわからない。台無しです。申込書はなるべくシンプルに、申込方法は多ければ多いほどよいということです。
 6番目は、「締切未設定のDM」。これは意外と忘れられがちだそうです。人間、締切日を設定されないとなかなか動きませんよね。今回、このセミナーの資料の作成もギリギリになってしまって、事務局の方には大変ご迷惑をおかけしたのですが。この場をお借りしてお詫び申し上げます。ということで、締切はきちんと設定しなければならないと。
 7番目は「チラシのようなDM」です。新聞折り込みチラシですが、これは大抵2つ折か4つ折で、拡げてから見ますよね。これに対してDMは封筒に入れますから、折数が多い。これをうまく使って、ストーリー展開につなげなければいけないということです。
 8番目は「パーソナル感のないDM」。先ほども申しましたとおり、DMは手紙ですから、実際には多くの人に出しているものでも、「私への語りかけだ」と思わせるような工夫が必要です。もちろん、バリアブル印刷で実際にメッセージをパーソナル化できれば最高ですが、それができなくても「あなたに」という表現を多用するなど、色々と手立てはあるかと思います。それがないとマス広告やチラシと同じになってしまいますね。
 最後9番目は「遊び心のないDM」です。例えばスクラッチを削って何かが当たるとか、ナンバリングで抽選とか、何か受け取った側がアクションを起こせるようなギミック、仕掛けを設定するとレスポンスがまったく違うとのことです。
 皆様、今後DMの制作に携われるようなことがございましたら、このようなことを思い出していただければと思います。

 
     
  5 ダイレクトメールの潮流
 さて、内容的には最後になります。ダイレクトメールの潮流についての整理です。今回は大きく3つの流れをご紹介いたします。
 
 
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 まず一つ目はOne to One化、パーソナル対応の進展です。これについては、皆様には釈迦に説教かと思いますが、デジタル印刷機のバリアブル(可変)機能によって、データベースと連動して、1枚ずつ内容の異なる印刷物を生産するバリアブル印刷が徐々に普及しており、これを利用したDMのOne to One化が進展しています。例えば、クレジットカード会社の「利用代金明細書」で、加盟店の割引クーポンや資料請求の窓口案内、QRコードを使ったケータイECサイトへの誘導など、過去の利用履歴などに基づきパーソナライズしているというような例が代表的ですが、流通系カード会社大手のオーエムシーカードでは、毎月約300万通の送付で、同一の組み合わせ内容は
 
  わずか3〜5人ということです。まあ、少しずつ違うということなのでしょうが、毎月60万から100万種類のDMを出しているということですから、驚きですね。
 
 
 2番目はWebサイトとの連動です。URLやQRコードなどを記載して、Webサイトへの誘導を図るDMが増加している一方で、Web上で情報を登録した人へのフォロー・メデイアとして、特別感のあるDMを送付するといった試みも増えているようです。先ほど申しましたように、単独では双方向性がないことがDMの弱点ですので、これを補完する試みとして、今後もWebサイトとの連動は進展していくと思います。
 
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 3番目は、先ほどもご紹介しましたが、DMに関する新しいサービスが続々と生まれていることです。日本郵政公社の「タウンメール」や「タウンプラス」、ヤマトダイアログ&メディア「エリアダイアログ」、それから同じヤマトで「BIZビズダイアログ」というサービスもあります。これは所在地/業種/売上/従業員数/法人格/上場区分といったデータ属性により、ターゲット企業を抽出し、ダイレクトメールを発送する法人向けのDMサービスなのですが、このようなサービスも生まれていて、情報に敏感な企業は既に色々と活用しています。
 
  本日のまとめ
 そろそろお時間ですので、本日のまとめに入らせていただきます。出版の世界では箇条書きは七五三、7、5、3がよいと言われておりますので、今回はご記憶になっていただきたいポイントを7つ挙げさせていただきました。
 
 
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 まず1つ目、マーケティングとは「儲け続ける仕組みづくり」=「顧客づくり」であるということ。2番目はマーケティング2.0時代とはマーケティング≒ダイレクトマーケティングの時代だということ。3番目はマーケティング・コミュニケーションとは、「企業−顧客間で行われる意思や感情、思考の相互伝達」だということ。4番目はマーケティング・コミュニケーションにおいては「Attention (注意)」を喚起し、「Interest (関心)」を持ってもらうための工夫が重要だということ。5番目はダイレクトメールの優位点は「対象選択性」「情報収容・説明性」「保存性」であるということ。6番目はダイレクトメールの利用は増加傾向にあるということ。そして、最後7番目は工夫次第でダイレクトメールの効果向上は可能であるということです。
 
以上、拙いお話しで大変失礼いたしました。ご清聴ありがとうございました。
 
   



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