日本フォーム工連・技術委員会セミナー記録

 技術セミナー
マーケティング2.0時代のダイレクトメール

講師 横 田 智 治氏
その1
株式会社 アイ・エム・プレス 
営業企画チーフディクター
 
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1 マーケティングとは
 それではまず、マーケティングとは何かということについてお話したいと思います。最初はちょっと堅苦しい話になりますが、しばらく辛抱してください。
  皆さんマーケティングと言うとどのようなことを思い浮かべるでしょうか。よく企業が行う市場調査、マーケティングリサーチと混同されている方がいらっしゃいます。それから一部上場の大企業、例えばトヨタとかソニーとかが行うもので自分たちとはあまり関係ないとお考えの方もいらっしゃるようです。
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 まずこれが、日本におけるマーケティングの総本山とも言える日本マーケティング協会の定義です。「マーケティングとは、企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である。」難しいですね。よく読むと確かに言っていることはわからないでもないのですが。頭のいい人が一生懸命考えて穴のない文章をつくろうとした結果の典型ですね。間違ってはいないのですが、非常にわかりづらい。
 次に辞書を引いてみました。『大辞泉』という国語辞書です。「顧客ニーズを的確につかんで製品計画を立て、最も有利な販売経路を選ぶとともに販売促進努力により、需要の増加と新たな市場開発を図る企業の諸活動。」だいぶ具体的でわかりやすいでしょうか。でも長いですね。「マーケティングとは何か」と聞かれて「顧客ニーズを的確につかんで製品計画を立て、最も有利な・・・」と答えられる人はいないですよね。そこで、手前味噌ですが、アイ・エム・プレスは考えました。アイ・エム・プレスが考えるマーケティングの定義がこちらです。  
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 マーケティングとは「儲け続ける仕組みづくり」=「顧客づくり」である。どうです。単純明快でしょう。「儲け続ける仕組みづくり」=「顧客づくり」、すなわち、自社の製品やサービスを継続的、定期的に購入してくれる“顧客”をつくることです。
  ここで肝心なのは「儲け続ける」「継続的、定期的に」という部分です。例えば、販売する製品の品質を落として原価を下げれば一時的に利益が増えるかもしれませんが、すぐにお客さんが離れていってしまいますね。それから、ダンピングと言いますか、とにかく採算を度外視して価格を下げれば売上は上がるかもしれませんが、利益は出ませんよね。
 ですから、自社の商品・サービスの価値をきちんと評価してくれて、正当な対価を支払い続けてくれる顧客をつくることが必要だというのが、私どもアイ・エム・プレスの主張なのです。ここで少しPRですが、皆さんにお配りした見本誌の表紙、タイトルの上に「インターネット時代の顧客づくりを活性化する!」という、キャッチコピーがあります。これは昨年から使っているものなのですが、以前は「お客様との関係づくりを支援するマーケティング情報誌」と言っていました。内容は必ずしもインターネットに限定したものではないのですが、「インターネット」という単語を入れた方が部数が伸びるという発行人の意見で変更しました。これも私どもにおけるマーケティングの一環ですね。まあ効果は微妙ですが。でも、「顧客づくり」の実例とかノウハウとか大変役立つ情報が満載ですので、ぜひこの機会に購読をご検討ください。年間定期購読料金24000円、税・送料込みでございます。
  さて、本題に戻ります。マーケティングとは顧客づくりですから、当然、皆さんの会社でも実践されていますよね。例えば、新しい印刷機を導入して生産能力が上がったら営業の方が取引先にアピールしたりしますよね。それから、定期的に取引先を接待して、コミュニケーションを図ったり。こういうことも広い意味ではマーケティング活動と言えると思います。ただ、今回はもう少し組織的、体系的な活動、それからBtoC、つまり対消費者のマーケティングに限定してお話したいと思います。
 
 
 マーケティングに関連して、「ダイレクトマーケティング」という用語がありますが、そのことにも少し触れたいと思います。もともと「ダイレクトマーケティング」は、TVCMに代表されるような1:nの「マスマーケティング」に対立する概念として、1to1のマーケティングを指すものだったのですが、最近ではちょっと事情が変わってきました。これは『アイ・エム・プレス』のコメンテーターで、「ダイレクトマーケティング」に関する著書もたくさんあるルディー和子さんという方のコメントなのですが、「現在では、顧客・見込み客とダイレクトに接触する、インタラクティブな、つまり双方向のコミュニケーション、顧客データベースの蓄積保存・・・といった要素を構成成分として持たないマーケテ  
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  ィングはほとんど存在しない。すべてのマーケティングはダイレクトマーケティングなのである。マスマーケティングという“用語”が死語になってきているように、ダイレクトマーケティングという“用語”も、この数年間でその役割を終えたと思う。」ということで、マーケティングはほぼダイレクトマーケティングになってきたということですね。マスマーケティングとダイレクトマーケティングが一体化したとも言えるかもしれません。本日のセミナーのタイトル、「マーケティング2.0時代のダイレクトメール」ということで、ちょっとかっこつけすぎたかなとも思ったのですが、  
 
この「マーケティング2.0時代」とは、つまり「マーケティング≒ダイレクトマーケティング」の時代と言えると思います。この時代のキーワードは「双方向性」と「マルチコンタクトポイント」、つまり、店頭とかコールセンターとかWebサイトとか、それから今日のテーマであるダイレクトメールとか。色々なところに企業と消費者・顧客の接点があるということですね。今、このような時代になっていると思います。  
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2 マーケティング・コミュニケーションとは
 さて、もう少し堅苦しい話をさせていただきます。
 
 
 
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 マーケティング・コミュニケーションについてですが、これも何か難しそうな印象ですよね。そもそもコミュニケーションとは何か。例の国語辞書によれば「社会生活を営む人間が互いに意思や感情、思考を伝達し合うこと。言語・文字・身振りなどを媒介として行われる」ということです。ここで注目したいのは、「互いに」「伝達し合う」というワードが既に含まれているという点ですね。つまりコミュニケーションとは元々、一方通行ではなく、双方向だということです。これに基づいてマーケティング・コミュニケーションの定義も作ってみました。マーケティング・コミュニケーションとは「企業−顧客間で行われる意思や感情、思考の相互伝達。言語・文字・映像などを媒介として行われる。」どうでしょうか。イメージいただけますか。
 コミュニケーションの内容については具体的に言うとこんなことです。まず企業側の意思・感情、思考ですが、「あなたに○○を買ってほしい・利用して欲しい」「あなたにウチの会社・店舗・製品を知って欲しい」「あなたにウチの会社・店舗・製品を好きになって欲しい」「あなたが何を求めているのか知りたい」とか、まあそんなことですね。一方で、顧客側の意思・感情、思考は、「店舗や製品についての情報が欲しい」「私が何を求めているのかを伝えたい」「私の不満を解消してほしい」とか、そういうことですね。ですから、ここでスムーズなコミュニケーションが成立すれば、どちらかが得になるというのではなく、お互いにHAPPYになるということです。
 
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 さて、少し話が変わりますが、最近ではインターネットの普及で購買行動が変化したと言われています。ご存知の方も多いと思いますが、従来、購買行動の法則としてはAIDMAの法則というのが一般的でした。「Attention」 つまり何らかの製品に注意、注目して、「Interest」 関心を持って、「Desire」欲求が生まれて、それが頭の中に「Memory」記憶されて、お店に行ったときに購買という「Action」行動につながるというモデルですね。これが、最近では、AISASに変わったと言われています。「Attention」「Interest」というところまでは一緒ですね。そこから「Search」検索という行動に入ります。インターネットで企業とか商品のWebサイトを見たり、価格コムなどの比較サイトを
見たり、最近ではブログなんかもありますね。もう調べまくるわけです。そして納得したらすぐ「Action」購買してしまいます。ゆっくり欲求、記憶なんていう段階は踏まない。大抵のものはネット上で買えてしまいますしね。まあ、セキュリティの問題などでネットでは買い物はしないという人もいると思いますけど。そういう人も比較的すぐお店に行って買っちゃう。それでその後、実際に製品を使った感想とか評価を、ブログとかSNS、mixiなどが有名ですね。そういうところで発表してみんなで分かち合うわけです。それが「Share (共有) 」ですね。通常こういった場合、変わった部分に注目するのですが、今回はあえて変わらない部分に注目しました。
 
 
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 インターネット全盛時代の購買行動でも、「Action (行動・購入)」 の前に、「Attention (注意)」「Interest (関心)」というステップがあることに変わりはないということです。ですから、マーケティング・コミュニケーションにおいては、「Attention (注意)」を喚起し、「Interest (関心)」を持ってもらうための工夫が重要だということです。
 
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