日本フォーム工連・技術委員会セミナー記録

 技術セミナー
「顧客感動」を呼ぶ印刷機械の予防保全

講師 川 名  茂 樹 氏
小森コーポレーション
サービス技術本部日本サービス部サービス2課課長代行
予防保全チーフアドバイザー
 
- 1 -  - 2 -  - 3 -  - 4 -  - 5-  - 6-  - 7-  - 8-

 さて、ここで皆さまにご紹介したいのは、チェックシートです。これは、お客様の若いオペレータが自分で作ったものです。全部、自分たちで作った手作りです。「毎日のそうじ」はこれをしよう、「毎朝のメンテナンス」はこれをしよう、「グリス」は週1回これをやろう、「1週間以内のメンテナンス」はこういう内容だ、ということです。
  次は、メンテナンスするための自分たちのマニュアルです。印刷のチェックリストも自分たちで作りました。課長さんがそれを使っています。
  掃除当番表は、加湿器とかクーラー、休憩室、あるいはトイレも自分たちでローテーションを作って掃除をしようということです。
 
画像をクリックして拡大(PDF)
 
画像をクリックして拡大(PDF)   画像をクリックして拡大(PDF)

 次はローテーション表です。4台の機械のローテーション表です。これを自分たちで作ったわけです。この「自分たちで作った」というのが素晴らしいのです。
 予防保全のお話をすると社長さんが私のところへ来て、「チェックシートをくれないか」とおっしゃるので、お渡しします。その社長さんは現場に「やっとけよ」とドンと置かれていく。これで成功した試しはほぼありません。横浜リテラさまのチェックシートは全部自分たちで作りました。自分たちでやるために作ったのです。だから実行します。メーカーからもらったチェックシートは、多くの場合、目をつぶった状態で印を押したチェックシートです。ここが決定的に違います。ですから、効果があった。
 やる気がありますから、こんなことまで実行しました。取扱説明書に「ここの部分にグリスをやってください」というのが書いてあります。左の写真はそれをコピーしてボードに貼り付けて、色をつけて、毎日やるもの、毎週やるもの、毎月やるものを自分たちで作って、フィーダーボードに吊り下げてあります。
 右側の写真は、掃除をしてきれいにして、それを写真に撮って、この状態を維持しようということです。これはデリバリー部に飾ってあります。

 
画像をクリックして拡大(PDF)
画像をクリックして拡大(PDF)
 
 
<故障件数履歴……>
  縦に5台の機械がならんでいます。小森が呼ばれて出動した回数が書いてあります。太い(赤)縦線の左側が予防保全をやる前です。
一番下の数字を見ていただきたい。総数、4台で43件ありました。1台当たり10.8件です。ですから4台ありますので、毎週小森が「こんにちは」という感じでした。
 1年目、5台に増えまして46件になった。1台当たり9.2 件。ちょっと下がりました。ここで見ていただきたいのは、「突発修理」と「予防修理」の数字です。
 「突発」というのは、ドンと止まって「小森さん、飛んできて」というものです。「予防」は、「ちょっとおかしいので今度のときに直してちょうだい」とこういう
 
画像をクリックして拡大(PDF)
 
 

ものです。これを「予防修理」といいます。この数字が引っ繰り返っています。突発の24件が19件になり、予防の19件が27件になっています。
 私、先ほどハインリッヒの法則のお話をいたしました。警告と微故障のところで見つけて上まであげないようにしましょう。壊れたとしても、そこで見つけましょうというお話をしました。見つけて、放置しないで修理したことがこの数字の逆転に出ています。
 そしてもう1年一生懸命やった。そしたら、5台で20件、1台当たり4件ということで、両方減りました。
 私が一番初め、予防保全のスパイラル運動のお話しをしました。日常保全があって、点検があって、修理がある。これがぐるぐる回っていったら、最後の3番目が限りなく少なくなっていくとお話ししました。ぐるぐる回った結果がこれです。

 
   
 
 
<トラブル損金……>
  それから、こういう効果もありました。トラブル損金。これは、ヤレ・ペケを出して検品に行ったり、刷り直した件数です。予防保全をやる前を100 とします。1年目やったときに93%、2年目わずか19%まで減った。5分の1まで刷り直しやヤレ・ペケが減ったということです。
 これはなぜか。星野社長様はこういっています。「まずは徹底した清掃、それからメンテナンスです。これなくして機械故障激減や印刷品質の向上という成功はありえません。汚い印刷機械からよい印刷物は生まれません。印刷部門の成功を他のセクションにも水平展開していきます」。実際にポストプレスに水平展開しました。
 実際にこの工場をすべて管理したのは、明田印刷部長様です。この方は
 
画像をクリックして拡大(PDF)
 
 

こう言っています。「品質の問題が出ると、今まではオペレータは機械のせいにしていました。今は機械は自分たちが見ているのだから大丈夫だと、他の事を分析するようになりました。意識が変わり自信を持って自ら進んであらゆることをやってくれます」といっております。この2行に注目していただきたいんです。「品質の問題が出ると」、つまり汚れるといままではオペレータは「小森さん、飛んできて」と言っていました。「でも、いまは、機械は大丈夫だから、環境はどうか、紙はどうか、水はどうか、インキはどうか、版はどうか、ゴムはどうかということを考えるようになりました」といっているわけです。それがこの19%を生んだ秘密です。
 

 
 
<オペレータが作成した「色ムラ」:特性要因図>
  こういうものを作っております。「色ムラ」というものが起こった時に、課長がすべてのオペレータに「何が原因だと思うか」ということでアンケートをとったわけです。そして そのアンケートに基づいて作った特性要因図です。ですから、ブランケット、壺、インキ・・・となっています。
 たとえば内田さんというオペレータは、「ブランケット。つきが悪かった。そういう経験がある」。あるいは辻さんというオペレータは、「へたっていたということがあったから気をつけよう」ということで、ブランケットだとか、インキ、印刷、あるいは機械、湿し水、ローラーなどの要因を上げてまとめたわけです。これがトラブル損金19%、つまり品質安定の秘密であります。
 
画像をクリックして拡大(PDF)
 
 
 
  次へ→  



to セミナー・座談会記録TOP 戻る

to Main to Main